• タイでの4日間

    新年早々にシンガポールに行ってきた。1月5日から15日まで、10日間・・・って、ちょっと長い気がするなぁ。美術館での展示設営のために行ったのだけど、それは最初の4日間ですんでしまった。んで、13日のオープニングまでの日々は、タイのバンコックに行って、のんびりしてた。バンコックのサムセン5番通りの路地にあるラジャタ・アート・ハウス。そこが僕のねぐらだ。僕の友だち、ラックやノイ、エックがいるところ。別に何の用事がなくても、僕はそこに行きたくなる。そんな気持ちが僕をそこに連れて行く。

    タイは、韓国と並んで友だちと呼べる人たちが多く住むところ。12年間住んだドイツにも、いつもフレンドリーに迎えてくれるアメリカにも友だちはいるけれど、僕はアジアが大好きなんだ。

    バンコックの空港に着いたら、知らない女の人から「Nara san!」って、声をかけられた。会ったこともない人だけれど、僕のTwitterでバンコックに着くのを知って、迎えに来てくれたそうだ。僕は警戒心まったくゼロで、驚きながらもニコニコしてしまう。彼女の名前はグン。友だちのアンと一緒に、僕を待っていてくれた。

    僕が目指すラジャタ・アート・ハウスまで、彼女達も一緒にタクシーで向かう。タクシーから降りれば、懐かしい顔が迎えてくれる。そして、すかさずのチャン・ビール。僕の大好きなタイのビールだ。迎えに来てくれたグンとアンも一緒に乾杯だ。食べ物もたくさん用意されている中庭で、僕は気持ちよく酔っ払う。

    2日目、起きたらノイとエックが朝ごはんを用意していてくれてる。3人で食べる中庭のテーブルに、朝の新鮮な風がゆっくりと吹く。それから僕は、サムセン通りからカオサンあたりまでブラブラする。

    夕方は、僕の愛知の大学時代、留学生でやって来てたウィットが訪ねに来てくれて、彼の娘のアンスヤと一緒に郊外のレストランへ連れて行ってくれた。ウィットは今、バンコックの国立美大、シルパコーン大学の教授になっている。娘のアンスヤは、前に会った時は中学生だったけど、今はもう20才。日本に留学してたそうで、今夜の会話は日本語だ。魚や地鶏やなんかの美味しいタイ・フードを食べながら昔話に花を咲かせる。昔、ウィットが僕の下宿に遊びに来た時に珈琲を出したら「日本人なのに、何故に珈琲?緑茶を飲みなさい!」と言われたのを思い出す。

    3日目、朝起きれば、ノイとエックが朝ごはんを中庭のテーブルに用意している。3人で朝食をゆっくりと食べる。こんな時間が、実は一番の思い出になるのかもしれないなぁと思ったりする。もしも僕が立派な詩人だったら、この朝のひと時を感動的な言葉に紡ぐのだけれど。

    11時前頃に、空港に迎えに来てくれた2人、グンとアンが初顔の友だちと一緒に車で登場。バンコックから200km、猿のいる山やホア・ヒンという海岸へ連れて行ってくれると言う。ので、出発。

    猿のいる山は、ラマ5世の別荘だった建物があるところ。ほんとに猿がそこいら中にいる。ここいらでは、だらぁ~っと寝そべる犬たちと猿が一緒にいる光景を見ることができる。猿山を後にして車を飛ばし、僕らはラマ6世の夏の離宮も訪れた。とても美しい木造の建物で、その中を歩けば幸せで平和な気持ちにさせてくれる。僕らはなんだか高校生のように、レンタ・サイクルにまたがってワイワイいいながらペダルを漕いで走る。

    本日の最後はホア・ヒンの海岸沿いにあるシーフード・レストランでの晩ごはん。イカやカニに魚、海を目の前にして美味しくないわけがない。なんだか、絵を描き続けていることで、どこかで誰かが僕の存在を知り、それがこうして一緒に海を見ながら食事をしている。人生って笑えるほどにおもしろい。

    ラジャタに戻ったら、ラックはもちろんケイトも帰りを待っていてくれてた。その他数人、子どもまでいる。みんなでビール。どうしても、僕はこんな中庭に集う人々が大好きなんだ。

    4日目、ラジャタの中庭、最後の朝食。アンスヤがやってきて、2人でトゥクトゥクに乗って王宮見学へ。この国には何度も来ているのだけど、恥ずかしながら王道の観光はしたことがない自分。初めての王宮、初めての寺院。アンスヤの日本語の解説で堪能度は120%。

    楽しい時間っていうのは、いつでもどこにいてもアッという間に過ぎていくもんだ。夕方にはシンガポール行きの飛行機に乗らなければいけない。急いでラジャタに戻れば、ノイとエックが空港まで送ってくれるって。彼らの車は日本から輸入された中古車で、日本語のステッカーが貼られたままでちょっと笑える。

    空港に着いたら、アンも待っていてくれて、結局ノイ、エック、アンスヤと4人で見送りしてくれた。どうしてなのか、なぜだかわからないけれど、どんなに蚊に刺されようとも、僕はやっぱりこの微笑の国が好きなんだな。