• 9月27日

    ふと顔を上げて、辺りを見渡せば誰かが制作していて、声をかければ手伝ってくれる。1年生から大学院、博士課程の学生まで・・・というか、僕にこの制作環境を提供してくれた森北准教授まで、手伝ってくれる。

    母校とは良いものだ。僕は再び、ここに戻って来て、気持ちだけは学生時代にタイムスリップしながらも、明日を見据えて制作している。少しでも学生たちの手本になるように制作する姿勢をみせたいと思っているのだけれど、その姿勢においては彼らと大差はないんだな、これが・・・

    何もはっきりとしたものは見えてはいないし、さりとて見たもの感じたものが、速攻で血や肉になるわけじゃない。しかしながら、それがこの体の血や肉となって、この手から生み出されることが、自分にとっては意味あることなのだ。

    その表出を求める葛藤はまだまだ続くのだろうし、個展のためには葛藤の中で生み出された形の定まっていないものでさえ、ひとつの答えのように展示することになるのだろう。それは仕方がないことだ、それ自体に後悔や後ろめたさを感じることなんてないだろう。ただ、まだまだ時間があるうちから僕は思う、もっと時間が欲しいと思う。制作するための時間ではない。少しでも考えをまとめ上げる時間。思考の中から不純物が濾過されていく時間。わが身の血となり肉となっていく時間。

    今まで描いてきた絵の、まだ見ぬ延長線上に現れるものに対して、その描き方や色や構図法や精神性は絶対に覆ることはない。それらは僕の心の中から、実態である体を使って生み出されたものであって、どこそこからの借り物なんかではないからだ。だから僕は自分の作品たちを信頼したし、作品がメジャーになるにつれて、この世の中に自分と似たような絵が現れても気にしなかった。

    これから少しずつ北風は強くなって、あっと言う間に秋は過ぎ去って冬がやってくる。僕はとにかく手を動かし、頭の中を動かして制作し続けるのだ。

    「がんばっぺ!」