夜汽車が好きだ。生まれて初めて乗った長距離列車が夜汽車だったからかも知れない。夕方に乗り込んで、車内に備え付けの簡易ベッドで眠り、目覚めれば朝の東京ってかんじの寝台車で、確か津軽2号って名前だったと思う。僕はそのとき高1で、友だちのコウタくんと一緒にニール・ヤングの来日公演を観に行くための上京だった。しかも僕にとっては初めての東京!という期待感と、列車がホームを離れた時から始まる旅!に2人ともワクワクしっぱなしで、そんな簡単に寝床に入れなかった。夜行寝台は夜が更けた頃には消灯しちゃうから、窓の向こうの暗闇に流れる家々の灯を肴に、大人ぶって缶ビールを飲んだっけ。
僕は今、寝台車ではないにしろ、東京から京都へと夜の新幹線で移動中で、ドミノのように並んだビルの灯を車窓から見ている。そして、なんとなく昔を思い出したわけだ。窓から見える灯は、田舎だと遠くに点在していて、都会に近づくほどに灯も窓に近づいてくる。だんだんと、暗闇に浮かんで銀河を旅する列車に乗った気分。トンネルの中はブラック・ホールでワープ中!って、一瞬だけど子どもに戻っちゃうな。トンネル抜けた先に待ってる現実は、子どもの頃に見た夢とは違うし、十代の頃ほど胸が躍るわけでもない。それでもやっぱりちょっとはワクワクしちゃうんだよな・・・
あ~あ、さっきからくしゃみが止まらない後ろの方の席のオヤジよ!俺の想像力に水をささないでくれよ~~~頼む!