• 9月4日

    愛知県立芸術大学という大学に来ている。来ているというか滞在している。学校の宿舎に住み、アトリエで制作している。レジデンスプログラムというやつで、今までは海外の作家ばかりだったのだけど、別に日本人でも良いとのことで、卒業生である自分が推薦されてレジデンスすることになったのだ。

    まだまだ暑い9月1日、僕の愛知生活は始まった。夏休み中にも関わらず制作している学生がチラホラ・・・。美大や芸大が他の大学と異なるのは、入学以前にやりたい事が明らかであり、入学後もそれに没頭できることだろう。特に絵や彫刻は、広くて汚れてもいいような制作場所が必要で、それゆえ学生は休みでも制作しにやってくる。

    僕が使っているアトリエは、全科共通で使える大工房なのだけど、ほとんど彫刻科の学生が使っている。僕の隣では大学院生が2人、なにやら作業している。そうそう、自分も今回は彫刻作品を作るのが目的だ。

    いろいろと手伝ってくれるアシスタントのような学生もいるし・・・アシスタントと言っても、付きっきりで手伝うわけではなく、彼らは彼らの作業をしているわけで、何か手が必要な時に声をかけて手伝ってもらうだけなので、こっちも自分のペースでやれる。ふと周りを見渡す時、それぞれに作業に没頭している光景は気持ち良い。僕は人に見られながらの制作は苦手で、公開制作なんて絶対無理なのだけれど、こうしてみんながそれぞれに制作している空間では見られていると感じることもなく、逆にみんながいることが励みになったして没頭できる。作業に対する入り込みや真剣さは、年齢や経験には比例しない。だから、そこに漂う緊張感は自分に喝を入れてくれるものでもある。趣味の教室のように、みんなでわいわい楽しくやるような雰囲気だったら、ここに来た意味はない。やりたいことを学び、将来それを職業にしようとする学生たちは、その厳しさと奥深さを知っている。

    僕を呼んでくれたのは森北准教授で、彼が高校生の時に通った美大予備校の先生が僕だったという長い付き合い。ここでは彼が学校や学生との橋渡しをしてくれている・・・と言うか、森北も手伝ってくれる。心強いなぁ~。

    そんなふうに、なんか良い感じで滞在制作は始まったのであった・・・