前回の日記の続き。10年前の今頃。
2003年のクリーブランド現代美術館から始まったアメリカ巡回個展。
ICAフィラデルフィア、St.ホセ美術館、St.ルイス現代美術館と続いてった。
その最終地ハワイ、ホノルル現代美術館での展覧会準備の様子が書かれているのだけど、
自分は、ほんとに時代遅れの画家なんだなぁと痛感するような文章だ。
もっと昔に生まれて、モンパルナスでボヘミアンな生活を謳歌して生き果てたりとか想像したら、夢のようで涙が出てくる。
結果的に、現代のアート・ジャングルの中でサバイバルしてる自分が意識される度に虚しくなる。
けれども、自分は懐古主義者でもないし、現実逃避者でもない。つか、そうであってはいかんのだ!
今この世に生きているからには、逃げではなく、自分の生き方を貫き通さなきゃいかんのだ!
2005/03/24
朝8時起床で、まったく普通人・・・にしては、ちょっと遅いか・・・
9時45分、マイケルが迎えに来てくれて美術館へ。
今日も快晴。
さっそくマスクの展示。
さらに大きめの絵も展示。
ランチは美術館のカフェでHalibutという白身の魚料理。
デザートにチョコプリン。
午後は皿絵の展示。
これも4時には完了。
甘いベトナムコーヒーを飲んで一服してレイにホテルまで送ってもらう・・・が、遠回りして山のてっぺんまで行って見る。
野生のルースターがうろついてるジャングル道路みたいなクネクネ道を登っていくと、ホノルルが一望できる場所へ到着。
ダイヤモンドヘッドも、ちゃ~んとクレーターだってわかるように見えてる。
さて、ホテル近くまで送ってもらい、車を降りて散歩。
ABCストアでビールを買おうとしたら、なんと「成人ですか?」と真顔で聞かれる。
「45歳です・・・」と答えたらレジの姉ちゃんが「Oh~!Sorry~!(笑)」
海の見える部屋でドローイング!といきたいところだけど、ブライアンからもらった薫製のタコをつまみにビール飲んでたらやっぱり眠くなってしまう。
疲れがたまっているのかなぁ・・・ということで、寝る!
2005/03/25
7時起床。
9時ころサラから電話。
車で迎えに来てくれてるとのことで、下に降りて美術館へ。
ワシントン州から来たサラは、飛び込みの元オリンピック強化選手。
ハワイアン作家とのコラボ展示になる小屋が!
床と屋根以外はほぼ建て込みが完了している。
額入りのドローイングと水彩を展示。
ほんとに今回の展示は早く進んでいる。
大きなバンの後ろに転がって昼飯のために街へ向かう。
HIDE chanという日本食の食堂。
まさに食堂ってかんじの店で、これなら一人でもこれそうだ。
客もホノルル在住の日系人のお年寄りが多い。
カツ丼食って腹一杯で美術館に戻る。
午後からは97枚のドローイングを貼り始める。
これが終われば展示は完了だけど、今日中には無理かな・・・
45枚貼り終えたところで時間切れ。
あとは明日ということでアカデミーで始まる『Rice Planet』という展覧会のオープニングに行く。
着いたらトレイシーがカウンターで飲み物を配っていて、さっそくキリンビール。
寿司もあって、来てよかった~~~~~~~と心底思うのであった。
『Rice Planet』の他にNeo Rauchの展覧会もやっている。
しかし展覧会は適当に観て、マイケルやジェイソン、レイたちと飲んで語り合う。
・・・と言っても英語・・・むずかしいがや・・・・
結局、灯りが消されるまでいて、レイに送ってもらってホテルに戻り寝る。
2005/03/26
朝8時45分、ジェイソンが迎えに来てくれて、彼の愛車Ford・Futuraに乗って美術館へ。
今日の目標は、ドローイングを貼り終わることと、ハワイ小屋を完成させること!
ドローイングを貼っていき、ラストの1枚となったところで館内に流してもらってるラジオからGREEN DAYのTime of your lifeが・・・・・・・・・・
曲の終わりと同時に貼り終わって、なんだか幸運が待っているかんじがしてきた。
昼飯はインド料理を食いに行く。
飯から戻るとシンシアが覗きに来ていて、彼女が貼り忘れてた1枚を発見。
それはSocial DのBall&Chainでした・・・
ジョンも娘と息子を連れて覗きにきて、子供たちにたのまれてBig Puppyの前で記念写真。
そうこうしているうちに小屋も完成目前。
アヤがサンドウィッチを持ってやって来て、すこしブレイク。
今回の展示はスタッフがほとんど日系人で、とてもアットホームなかんじだ。
会話は英語だけど、とにかく彼らはよく気がつくので、痒いところに手が届くかんじ。
この美術館で行なわれた展覧会で一番の展示!とみんなから言われて・・・・嬉しい~~~。
9時前くらいに小屋も完成して、みんなで乾杯!
ジェイソンにホテル近くまで送ってもらって『なかむら』で味噌ラーメン食ってホテルへ戻る。
2005/03/27
リュウタ+アヤと一緒にドライブ。
それにしてもハワイは緑豊かな島々だ。
ハワイ大学の美術学部ものぞいてみる。
アトリエを少し回ってみるが、アメリカの大学というよりは日本の美大に近いかもしれない。
リュウタ邸で日本から持ってきたビデオ『サラ、いつわりの祈り』を観る。
JT LEROYの原作をアーシア・アルジェントが監督したやつだ。
アーシアは映画の中でサラも演じていて、その演技はまったくパーフェクト。
サントラはソニック・ユースにRANCIDのティム・アームストロング。
『誰も知らない』にも似た悲痛な映画だけども、観終わった後にはある種のルサンチマンがある。
夜はダイエイに行って『イカの塩辛』などを買い物。
リュウタ邸に戻って、ご飯+味噌汁と食うが・・・・・・美味いでかんわ~。
2005/03/28
朝9時起床。
ワイキキを散歩。
アディダス74年モデルのリプロダクションのスニーカーを買う。
色は黒に黄色の3本線。
そして『なかむら』で冷やし中華・・・
夕方5時から美術館でハワイ小屋の中の展示。
けっこう時間がかかるけど、思うように展示は進む。
それでも展示終了して時計を見れば11時30分。
帰りはリュウタに送ってもらい、途中ダイエイに寄っておもちゃのウクレレを買う。
それにしてもダイエイ、24時間営業とはスゴイ。
このウクレレも小屋の展示に付け加えよう。
2005/03/30
ハワイ・・・こんなにもメイン・シーンから遠く離れて・・・
ちょっとレベルは低いけど・・・アーティストは純粋で欲が無く・・・
なんか、この島の中だけがこの世だったら、とても幸せなんだろう。
ハワイの次は、アーティストの欲が渦巻くニューヨークか・・・
きっとみんな人参を鼻面の前にぶら下げられて、鼻息荒くしてるんだろう。
とにかくギャラリーを探して、自分に幸運が舞い込んでくるのを待っているんだろう。
このハワイでジェイソンやリュウタたちに会えたのは大きな大きな収穫だ。
メイン・シーンから遠く離れていても、純粋に制作をしているその姿は自分なんかよりもよっぽどアーティストだ。
ワイキキ・ビーチから少し離れれば、観光客にはわかんない秘密の宝がたくさんころがってるんだぜ。
2005/03/31
オープニング。
なんかよく実感がわかないけど、これでUSツアー個展もおしまい!
いろんな街でいろんな出会いがあって、それはアート・シーンとは関係ないけど、僕の個人史に大きな跡を残す。
アーティストとかギャラリーとか戦略とか欲とか、そんなことなんて考えてない。
たとえば小山さんはジェイソンに「紙にじゃなくてもう少し大きなキャンバスに描けばいい・・・」とか言うけどさ。
ジェイソン、君は、売るために、売れるためには描かない。
自分のやりやすい方法で描くだけだ。
それでいいんだし、それが僕を感動させる。
世の中の、大きな都市に住む、多くのアーティスト。
みんな、お声がかかれば、すぐにでもやりたがる。
あっちの水は甘いぞ、こっちの水も甘いぞって。
そんな考えが悪いとは言わないけど、いつのまにかそう考えてしまっているのはどうかな。
最近、自分がそんなシーンの中にあるギャラリーで展示することに、戸惑いを感じ躊躇するのはそういうことなんだろう。
5日後にはニューヨークか・・・
大きな大きな、そして小さなニューヨーク。
もうちょっとここにいて、制作したいなぁ・・・