• Interview for 非池中藝術網 (Taiwan)


    Q-1.
    奈良先生、こんにちは。今回の特別展においてお選びになった作品に対する思いを聞かせてください。

    A. 現在、ロサンゼルスで今までで一番大きな個展をしていて、今回の台湾展が決まった時に過去の代表作の出品は不可能でした。しかし、去年描いた中での傑作と思えるMiss Moonlightは、ロサンゼルス個展への準備後に描かれたもので日本にありました。そこで、Miss Moonlightをメインに少しのドローイングを加えて台湾展を構成しようと思いました。そして、自分も大好きで傑作だと思っているMiss Moonlightと対になるような絵も必要だと考えて、新たにHazy Humid Dayを描きました。何度も訪れた台湾の友だちや気候のことを考えて描いたものです。

    Q-2. 先生の作品が初めて台湾展示されたのは2004年のことでしたが、当時の台湾は、2003年のSARSというパンデミックから回復の時期でもありました。一方、今回、台湾で初の特別展の開催も、世界中でコロナのパンデミックの真っ最中で、2つの展示タイミングは、ちょうど世の中が芸術による癒しを求めたがる時期にあり、台湾にとって歴史的な意味を持っております。ところで、先生のアートは「癒し」のみならず、「この世に対する不満」という心境を元に作り出されているとも感じさせてくれます。そこで、作品の「癒し」について、どんな考えをお持ちで、また以前の作品と何か変化があれば、ぜひ聞かせてください。

    A. 自分は自作に対して「癒し」を意識したことはありません。しかし、実際には描くこと、自分が満足できる作品を作り上げること、作り続けることで自分自身が癒されていると感じています。そのようにして出来た作品が結果として、誰かを癒すものであるのならとても嬉しいです。

    Q-3. 次に先生の作品の変化についてお伺いしたいのですが、その変化は、2000年から今にかけて経験された出来事と関連したりするところがありますでしょうか。また今回の特別展で展示される作品の中で、もし該当する例がありましたら、少し詳しく教えてください。

    A. 総会の奈良美智特展のFacebookにある「Miss MoonlightとHazy Humid Day」の解説を参照してください。

    Q-4. 実は私自身は、奈良先生の作品に関連している文学と音楽から先生のアート作品を知りました。そこで、先生の作品から強く音楽性と文学性を感じております。まるで一つの曲が違う舞台で演奏されているように、先生の作品から、数年間にわたって同一の構成要素の反復によって異なる音調を持っていると感じております。この反復と異なりについて何か考えがあれば、ぜひ聞かせてください。

    A. そう感じてもらえて嬉しいです。「僕の作品が好き!」という人と話すことには積極的にはなれませんが、同じような文学や映画、音楽が好きな人たちとはずっと語り合えるような気がしています。

    Q-5. この数十年間、奈良先生が作り続けてきた特徴的なイメージを持つ女の子は、さまざまな表情や姿を見せてくれました。芸術創作の本質という視点から少し考えてみたいと思いますが、先生がこれまでこの女の子をモチーフとした作品を作り続けた理由は何ですか。

    A. わかりません。言葉では説明できないことが、自分にそのようなモチーフを進化させてくれたと思っています。実際、言語化できない心の有様を絵にしてきたのだと思います。

    Q-6. 先生の初期の作品は、複合素材で作る立体の作品が多くあり、現在の女の子の表現とたいぶ異なっています。その後、女の子と犬の作品は、世界で知られており、戦後の芸術の歴史を代表するような存在になっています。世界で高い人気を誇る女の子と犬以外、先生が今まで他のモチーフや表現をしてみたいと思われたことがありますか。

    A. 子供の頃から、自分の視点を重視した写真を撮り続けています。発表したことは少ないですが、これからは積極的に発表していきたいと思っています。その写真群が、自分の感性の在り方を説明してくれると思っています。

    Q-7. 多くの台湾人は先生の作品が大好きですので、先生が先日ツイッターで台湾の画家の郭雪湖氏の作品《南街殷賑》とその作品をモチーフした現代の台湾漫画家の作品をシェアされていますが、その投稿は台湾人にとって特別な意味が出てきて(先生のシェアによって特別な意味を持つようになりました)、芸術とは、時代を超える不滅の特性を持るということを実感させてくれました。先生ご自身が芸術の創作において、何か追求しているものはありますか。

    A. あんまり考えたことはありません。ただただ郭雪湖氏の作品が好きで、それが漫画に引用されて現代に生き続けていることに感動しました。

    未刊行