• Interview for GQ Taiwan (Taiwan)


    Q-1.
    今回は台湾に足を運び、展示会場の陳列を自ら指揮なさいました。重視なさっていることが伝わります。展示作品を決める時、今回の展示全体において、どのようなテーマを設定されましたか?出店作品を選択する際の条件はどのようなものですか?

    A. 現在、ロサンゼルスで今までで一番大きな回顧展をしていて、今回の台湾展が決まった時に過去の代表作の出品は不可能でした。しかし、去年描いた中での傑作と思えるMiss Moonlightは、ロサンゼルス個展への準備後に描かれたもので日本にありました。そこで、Miss Moonlightをメインに少しのドローイングを加えて台湾展を構成しようと思いました。そして、自分も大好きで傑作だと思っているMiss Moonlightと対になるような絵も必要だと考えて、新たにHazy Humid Dayを描きました。何度も訪れた台湾の友だちや気候のことを考えて描いたものです。

    Q-2. 2015年香港展の際のテーマは「Life is only one!」でした。今台湾展のテーマはどのようなものですか?どんなことを伝えたいとお考えですか?

    A. テーマはすべての展覧会に共通していると思います。それを言葉で表すのが難しいので毎回、個展のタイトルを付けてはいますが、言葉にならないことを作品化しています。自分から伝えたいことはありません。すべては見る側の感性に委ねられています。自分の作品を大好きな人もいるように、大嫌いな人もいるはずです。

    Q-3. 今回台湾での企画上の経験において、前回の香港展との違いは何ですか?今のところで最も忘れ難いのはどんな事ですか?

    A. やっぱり、蔡総統とのTwitter上での会話から始まったことです。

    Q-4. 台湾には先生の作品のコレクターがたくさんいます。また多くの若者がコラボグッズなどをコレクションしています。先生の目からご覧になって、彼らはどのような思いで、先生の作品をこんなにも愛していると思われますか?

    A. それぞれ違うと思います。たくさんの好きな作家の中のひとりとして自分の作品を好きな人もいるだろうし、似たような傾向の作家と自分の作品の決定的な違いを感じて好きでいる人もいると思います。

    Q-5. ファンとの間でおもしろく忘れがたい触れ合いの経験はありますか?ファンの、最も情熱的、または不可思議な先生に対する愛の表現方法にはどんなものがありますか?

    A. たぶん最初の台湾人のファンとは90年代の終り頃にSNS上で知り合いました。その後も交流を続け、いつの間にか友だちになっていました。今その人は、僕の本を台湾で出版する手伝いをしたりしています。また、その人を通じて何人かの台湾の方と友だちになりました。仕事とは関係無く、一緒に台湾の旅をしたりしています。面白いのは、彼らよりも自分の方が原住民の歴史に詳しかったことです。彼らは今も通訳や翻訳、また今回の特展でのグッズ作りや製作も助けてもらっています。

    Q-6. 英国のファッションデザイナー、Stella McCartneyは先生とコラボし、春夏ファッションのカプセルコレクションを発表しました。コラボレーションの誘いを受けた時どのように感じましたか?ご自身の作品とファッションとのコラボにおいて、どのような期待とリクエストがありましたか?また何か忘れられない、興味深いご経験はありましたか?
    Stella McCartneyとのコラボシリーズはunisexです。つまり男性も女性も着られるということですが、これは昨今のファッション界やストリートで普遍的な考え方です。Stella McCartneyもインタビューにおいて、自分の考えは、伝統的な二分法の規範を受けない現代の性役割に合致しており、男性的、女性的という境界をしっかり分ける必要はないと発言しています。このような若者の文化的潮流をどのようにご覧になっていますか?馴染めないと感じるようなことはありますか?またこのような流れのどのような発展に期待しますか?

    A. 今までに何人かの有名なデザイナーやファッションブランドからコラボの話を頂いたことはありましたが、まったく興味を持てませんでした。今回ステラ・マッカートニーとのコラボを受けたのは、彼女のデザイン的な面ではなく、人としての主義主張が自分と共通していると思ったからです。

    Q-7. 先生の作品は世界中の有名ギャラリーで人気を博しています。また一方、この20年で、若者からの支持がますます高まり、それが退いたことはありません。常に時代の最先端を歩んでいくために、現代文化やトレンドの変化を、日々の暮らしでどのように吸収し、また感じていらっしゃいますか?

    A. わかりませんが、自分は10年前、20年と同じように普通に電車や地下鉄に乗り、ひとりの音楽好きとしてライブ会場の列に並びます。そして、アシスタントを使うこともなく、自分でキャンバスを張り制作しています。そういうふうな好きな自分であり続けること自体が好きなんだと思います。

    Q-8. 先生は欧米のロックとPunkを愛好しておられ、REMのアルバムのためにカバーもデザインされています。今でも音楽を楽しんでいらっしゃいますか?最近はどのような音楽を聴くことが多いですか?

    A. いっぱい聴いていますが、やっぱりインディーズの中から好みのバンドなんかを見つけるのが好きです。

    Q-9. 創作活動から離れている時には、音楽以外に何かスポーツはなさりますか?映画やテレビはご覧になりますか?

    A. 中学では柔道、高校ではラグビー部でした。でも、今はスポーツは何もしません。ただ、山登りや歩くことは好きです。映画は、なんでも観ます。

    Q-10. 今まで多くの人を訪問できて、みんなは人生低潮の時、先生の作品を見て慰められて、とても癒されると言います。あることを先生にお聞きしたいのですが、先生は落ち込んだ時、どんな趣味のあることをして、癒されますか。この理由は何でしょうか?

    A. 落ち込んだりしても、だいたい3日くらいで復活します。自分よりも悲惨な状況にいる人たちのことを想えば、どんな悩みでも大したことではない、と気付きます。

    未刊行