• Interview for madame Figaro China & Wonderland China (China)

    Q-1. 作品のスタイルやそれらが表現する意味は、幼少期の体験や感情と関係があるのでしょうか。以前、"成功よりも成長が重要だ "と仰っていましたが、今もその考えに変わりありませんか?

    A. 習うことよりも経験したことが大切です。知識を求めるものに対して書物は平等に存在しているけれども、幼少期の経験は自身の核の形成に直結します。

    Q-2. 作品には、ナイフや十字架、たいまつを持った子どもや、吸血鬼の歯やタバコをくわえた子どもがよく登場しますが、こういった子どもたちは、どのような事を表現しているのでしょうか?

    A. 想像におまかせします。

    Q-3. 多くの人が男の子と女の子を区別すると思いますが、作品を創作する際に性別を気にすることはありますか?

    A. 成人した人間よりも、男女の区別も曖昧な子供たちが囚われのない感性を持っていると思っています。

    Q-4. アメリカの著名な美術評論家ロバータ・スミスは、あなたを「キース・ヘリング以来、最も平等主義的なビジュアルアーティストのひとり」と評しましたが、こちらに関してどう感じますか。また、アートに対してどのようにお考えでしょうか。

    A. 彼女と会った時に60年代のロックの話をしました。美術という小さな世界で語るのではなく、その外に広がる大きな世界に人間は暮らしています。美術の話ばかりではつまらないです。自分が平等主義的なアーティストに見えるとしたら、それは美術の外に住んでいるからです。

    Q-5. 今、新たに取り組んでいる事はなんですか?

    A. 旅をすること。

    Q-6. アーティストとしての自分をどのように認識していますか?作品を創作する上で、最も大切にしていることは何ですか?また、近年、何が創作活動に取り組む原動力となっていますか?

    A. 90年代は1年間で100点以上も絵を描いていましたが、最近は1年間で20枚にも満たないです。自分の作品が世に出るようになってから、作品が自分から離れていってしまう感覚が強くなりました。職業としてアーティストを選んだならば、もっと制作して作品を世に送り出さなければいけないでしょうが、自分が魅力を感じているのは「自己との対話」による作品自体の表出であって発表ではないのだとここ数年で気づきました。

    Q-7. 今の若者のどんなところに刺激を受けていますか?

    A. 若者よりも子供たちと会話し共に遊ぶことから刺激を受けています。

    Q-8. これからの若いアーティストに伝えたいことはありますか?

    A. 自分の中から生まれてくるものを探してください。自分もそうして生きています。

    Q-9. 一日を通して、普段の生活はどのように過ごされていますか?

    A. 規則正しくはありません。起きたい時に起きてメールチェックして、Netflixで映画を観たり、音楽を聴きながら本を読んだりしています。自分が育てている木々の世話をしたり草刈りをしたりしています。最近、キャンバス作品は描いていません。紙にドローングすることはやっています。

    Q-10. スタジオの規模や機能、特徴など、詳しく教えてください。スタジオ内で作業をする日は、普段どのようなルーティーンがありますか?

    A. スタジオは6mx12mくらいです。絵は一枚づつ描きます。一度に複数の絵を同時には描けません。アシスタントはいません。ひとりでキャンバスを張ります。瀬在の準備や掃除、後片付けも自分ですることで変わらない感性を保っている気もします。

    Q-11. 1988年に母国を離れ、ドイツに留学されました。留学をしたことで、創作活動や日常生活のリズムに影響はありましたか?

    A. 必然的にひとりで考える時間が多くなりました。第二の子供時代が始まった感じで、毎日が新しいことだらけでした。時間が無限にあるように感じて、幸せでした。

    Q-12. ドイツに12年住んでみて、作品に変化や新たな要素は取り入れましたか?

    A. 日本にいた時よりも、制作自体ではなく人間として成長できたと思います。そのような成長が絵を進化させてくれたと思っています。

    Q-13. 20代の頃、旅行が好きだったと伺っています。今も好きですか?

    A. はい。20代の時以上に好きです。

    Q-14. 印象に残った旅はありますか?それはどこで、どのように印象に残っていますか?

    A. ヨルダンでシリア難民のキャンプを訪ねたことや、台湾で原住民の村々を訪ねたこと、日本の北国の小さなコミュニティに滞在して、そこに住む子どもたちと1ヶ月間一緒に制作したこと。

    Q-15. 直近で、どこへ旅行に行かれましたか?どのような旅でしたか?

    A. 用事があって本州の北端にある自分の実家に戻った時に、そこから汽車で海底トンネルを通って1時間くらいの町、北海道の函館に行って海産物を肴に酒を飲む旅をしてきました。思いつきの目的のない自由な旅ですが、期待しないほど得るものはあるのです。

    Q-16. 旅はあなたの作品にインスピレーションを与えますか?そして、そのインスピレーションをどのように実際の作品に反映させるのでしょうか?

    A. 作品には直接影響はないと思います。旅によって自分が洗われたり、脱皮するような感覚があって、それが自分を自分でいさせてくれます。

    Q-17. 音楽のアルバムカバー作品は、どのように制作されたのでしょうか?多くの人があなたのアートとパンクロックとを結びつけて考えますが、それについてはどう感じますか?

    A. 好きなミュージシャンから頼まれればやる、というスタンスです。有名無名は関係ありません。

    Q-18. 音楽があなたにとって主要なインスピレーション源だと思いますが、どのように作品に反映されているのでしょうか?

    A. それはもう、元気になったり、感性が増幅されたりしてビンビンになる感じです。気持ちの問題です。

    Q-19. 日本人アーティストで構成される前衛アート集団「スーパーフラット」に参加することになった経緯は?

    A. 友人でもある村上さんからスーパーフラットという展覧会に誘われたからです。

    Q-20. ハイデシベルな音楽が好きとうかがっていますが、そういった音楽からインスピレーションを得ているのでしょうか?それとも、作品を制作する際により良い雰囲気を作ってくれるのでしょうか?

    A. アーティストと呼ばれるずっと前、子供の頃から音楽を聴いていました。良い感性を維持してくれていると思います。

    Q-21. 最近気になるアルバムやアーティストがあれば教えてください。

    A. たくさんあって答えられません・・・

    Q-22. あなたの好きなファッションデザイナーは誰ですか?(もしいれば)なぜ好きなのですか?

    A. ファッションの世界にはあまり興味が無いですが、目に映るものには反応します。しかし今回コラボしたステラ・マッカートニーはデザイナーであること以前に、世の中に対して明確な意思を持った人であることが一緒に仕事をしたいと思ったきっかけです。

    Q-23. あなたのファッションに対するこだわりを教えてください。

    A. 40歳を過ぎたあたりからどうでもよくなりました。

    Q-24. 2023年に最も期待することは何ですか?

    A. NO WAR! WORLD PEACE!

    Q-25. 第一弾のコラボレーションに続き、Stella McCartneyとのシェアードカプセル第二弾が決定しましたが、ファッション業界に関わりたいと思った理由は何ですか?
    今回のコラボレーションでは、どのようにご自身の姿勢やスタイルを表現しましたか?

    A. ステラがデザイナーである以上に人間として素晴らしいと思ったからです。彼女に自分の作品を投げて、どんなふうに受け止め料理するのかとても興味があり、ワクワクしました。

    Q-26. このコラボレーションであなたがが人々に伝えたい姿勢や哲学は何ですか?

    A. ファッション(服)が人々に力を与える!というようなこと。

    Q-27. 2021年のStella x Yoshitomo Naraで、初めてファッションブランドとコラボされましたが、その際に新たな発見はありましたか?

    A. もっと「何か」できるんじゃないか?という可能性を感じました。なので、今回またコラボできて、その「何か」に近づけた気がします。

    Q-28. 最初のコラボレーションで、最も興味深かったことを教えてください。

    A. ポンピドゥーセンターの前でのショウを視て、プロフェッショナルなモデルたちの持つ力を感じられたことです。しかも、彼らは僕の絵を、言葉を、まとって威風堂々と歩いていました。

    Q-29. Stella McCartneyというブランドについてどう思われますか?他のブランドからも常に声がかかり、コラボレーションを熱望されていると思いますが、その中でStella McCartneyを選んだ理由は何ですか?

    A. 何度も言いますが、彼女の持っている社会に対する明確な意思です。

    Q-30. デザイナーのStella McCartneyとはどのように制作を進めていきましたか?また、お二人の共通点は何だと思いますか?

    A. けっこう何も言わなくても通じ合っていたと思います。

    Q-31. ご自身の作品制作とファッションブランドとの仕事の違いは何でしょうか?

    A. ファッションが人に向けて創造していくのに対して、自分の制作は自分自身と対話し創造していくことです。

    Q-32. 今回のコラボレーションを通じて、若者たちに伝えたいメッセージは何ですか?

    A. 言葉にしなければならないメッセージはありません。購入できなくてもショップを訪れて手に取ってみてほしいです。そうすれば何か伝わるかもしれません。